2002年10月のつぶやき



その2

カナダから来日のカテリーナ・マヌーキアン嬢と1年ぶりの共演。
彼女のお父さんはアルメニアの名バイオリニスト。
お母さんはロシアと日本のハーフ。
カナダで育ちジュリアードで勉強したという彼女は、
ロシア系の音楽観とアメリカンな感覚と、
そしてマーラーのシンフォニーとワーグナーのタンホイザーは
全部暗譜しているのよ、というこてこてなドイツ的嗜好も
あったりして、その音楽はなんともいえないスタイルで面白い。

20歳で華奢な体で妖精のような容姿の彼女なのに、
その体力気力はさすがの私もついていけないほど。
リサイタルプログラムの合わせが終わってくたくたに
へばっている私に、
「ねえ、ブラームスの1番をやってみましょうよ」と
プログラムに入っていない曲を通しで弾かせるわ、
(プログラムは2番のソナタだった)
それで止まらず「じゃあ、シューマンは弾ける??」

二人でバイオリンソナタをあれこれ弾き倒した後は
ねえベルクのソナタ弾いてよ。シェーンベルクも弾いてよ、、、と
次々偏ったピアノ曲のリクエストがくる。
じゃあ、ベルクのヴァイオリンコンチェルト知ってる??
といって今度はまた自分が弾き出して止まらない。

たまりかねて「明日本番だよ、時差ぼけあるんじゃないの?
早く寝なさいよ。」と、止めたほどだった。

一週間一緒に過ごすと、とにかく私にはよい英語の勉強になった。
勉強、、というか、この私のブロークン英語でいかに
楽しくコミュニケーションするかという修行。
来年は欧州での録音やコンサートが続くから
これは死活問題だ。


関西での公演を終えて、一緒の新幹線で東京へ戻る車内で、
「時間があったら買い物に付き合ってくれないか」という。
20歳の彼女は、渋谷のコギャルのファッションや、
日本のお酒などにも興味があるようだ。

とは言っても私は渋谷で遊んだりしないから
20歳の女の子が喜ぶ店などわからない。
それで急遽私の教え子の芸大生に電話をして
渋谷に呼び出した。

彼女はカテリーナと同じ年頃なので人選はばっちりだった。
3人でスニーカーショップをうろうろ、ピアスショップで買い物、
夕方から居酒屋で乾杯、、そしてプリクラもとったりした。

彼女は今頃カナダで、私と一緒に選んだピアスを
しているだろうか。




(岐阜サラマンカホール、ステージ裏にて
ギター 大萩康司 ヴァイオリン カテリーナ・マヌーキアン 私)



その1

チェロの藤原真理さんの幕張でのリサイタルで、
ファッツィオーリというイタリアの珍しいピアノを弾く機会に恵まれた。
私がイタリアから日本に持って来たスタインウエイは
ポリーニ、シフなどといった現代のピアニストの絶大な信頼があり、
故ミケランジェリとともに日本にも来たことがあるという、
名調律師ファッブリーニの選定だったが、
このファッツイオーリというピアノは、これまたイタリアの有名な調律師
ファッツイオーリが、スタインウエイとベーゼンドルファーの
良いところを混ぜて作ったという。一番大きなコンサート用グランドは
3メートルもあるそうだ。
スタインウエイのフルコンサートグランドは2メートル70センチなのだから、
3メール以上とは一体どんな音がするのだろうか。
幕張のホールに入っているファッツイオーリは、それより一回り小さいもので
スタインウエイのフルコンと同じくらいの大きさだった。

今回、真理さんとの曲目はピアノが大活躍の
メンデルスゾーンのソナタや内部奏法のある武満徹作品も
入っていたので、弾いたことの無い種類のピアノでは
心配で、事前に幕張へピアノを試しにでかけた。

会場に入ると真理さんのインタビュー記事の新聞が
拡大コピーして壁に貼っていた。
壁の前でしばし立ち読み。
「目標は、、、」という質問に、楽壇デビュー30年の真理さんの
「大器晩成を目指したいです、ふふふっ」という
お茶目な回答がそのまま記事になっていて、思わず私も
ふふふっ、真理さんらしい、、、と笑ってしまった。



さて、その銘器ファッツイオーリはなかなか噂にたがわぬ楽器だった。
低音はやわらかくでも太く良く響くし、高音にはかなり輝きがある。
ただ、輸入されてからほとんど弾かれていないようで、
弾きこんでいる場所とそうでない場所と、音域によって音色に
かなりばらつきがある。
また、弾きこみが少ないため、ハンマーがまだまだ軟らかく
音の分離が難しい。
もっともっと弾きこんでこなれてゆけば、よさも倍増するでしょうね、、と
真理さんと二人で会館の方々とお話しした。
ベーゼンドルファーも保管によって生かすも殺すも、、という
難しい楽器だと思うけれど、このファッツイオーリの
生かすも殺すも、、の難しさはベーゼンドルファー以上かもしれない。
会館の方々も真理さんのご意見を聞いて、
今後は若いピアニストにリハ-サルで弾きのこみの会などを企画するなど
考えてみましょう・・・とおっしゃっていた。

真理さんは、ホールや人材を育てるという事にはいつも本当に積極的で、
私がこの10年、その姿勢から学ばせていただいたことは本当に多いのだ。
今回もアンコールで突然思いついたようにステージを飛び降りて、客席のフロアで
無伴奏を弾いてしまった。
舞台袖で私とマネージャーさんはびっくりしたのだが、
そのほうが床板の響きがよく、
お客さまにもその違いがはっきり判ったようだった。


ピアノもその場所場所で一期一会のお見合いのようなもので
なかなか大変だが、チェロも床が楽器の一部なので
これまた一期一会、大変なのだ。
でもそこを最大限に生かすのも音楽家の力というもの。

私もまたまた日々精進精進。。。。。。





(真理さんとの幕張でのコンサートの報告は
 幕張ベイタウンコミュニティコア研究会
 http://www.baytown.ne.jp/core/の掲示板で、
 晴海の第一生命ホールでのコンサートの様子は、
 http://www.triton-arts.net/japanese/lec/fujiwara.robikon9.26.html
 で、楽しい写真入で紹介されています。)